研究内容

1. 摩擦接合(FSW、摩擦圧接、線形摩擦接合)界面制御と形成機構の解明

中・高炭素鋼、原子炉用鋼、ODS 鋼、TRIP 鋼、Ni 鋼、Cr 鋼、1600MPa 級高張力鋼、高強度Ti合金、難燃性Mg 合金、各種銅合金、超微細粒Al 合金、厚板Al 合金などの難接合材の摩擦攪拌接合や、Al/Mg、Mg/鋼、ODS 鋼/鋼、金属/セラミックスなどの組み合わせにおける異種接合に取り組んでいる。

高融点金属の摩擦攪拌接合技術を確立し、現時点で、世界で最も高い融点(2620℃)を有する材料の摩擦攪拌接合に成功した。また、炭素鋼をA1点(723℃)以下で接合する手法を開発し、炭素量に関係なく、接合する技術を確立し、多くの産業分野で注目されている。さらに、レーザと組み合わせたハイブリッド摩擦撹拌接合法やショルダとプローブが別に駆動する複動式摩擦攪拌接合法を開発し、接合部終端部に穴の残らない手法を確立した。

この他にも、Al 合金や超高張力鋼に対しては、HAZ 軟化の生じない低温摩擦攪拌接合法の開発や新規ツール材質、形状の開発、摩擦攪拌プロセスを用いたポーラス材料の生成にも取り組んでいる。

2. 新規接合&改質プロセスの開発

FSW のツール寿命の問題を解決するため、ツールを用いない線形摩擦接合法や摩擦圧接を用いて、接合界面に強加工を加える手法を確立した。この他にも、Al 合金や超高張力鋼に対しては、HAZ 軟化の生じない低温摩擦攪拌接合法の開発や新規ツール材質、形状の開発、摩擦攪拌プロセスを用いたポーラス材料の生成にも取り組んでいる。

さらに、パイプなどの中空構造を摩擦攪拌接合する新規技術として、反転摩擦攪拌接合技術を開発した。摩擦攪拌接合は、高速で回転するツールを構造体の表面から押し当て、接合する方法であるが、ツールの形状を反転させ、ツールを引きながら接合することで、構造体内部から接合を可能にした。

また、摩擦攪拌プロセス中に異種の金属の粉末を混入させることで、構造物の一部を組織制御する目的で開発した摩擦攪拌粉末プロセス(FSPP) を用いて、Cr 添加による鋼の改質など行っている。

3. 溶接界面、溶融池形成機構の解明

大型放射光施設(SPring-8)にて、高輝度X線を利用したその場観察により、TIG溶接過程の組織形成や凝固割れの形成過程について明らかにした。

ステーショナリーショルダツールを用いて、摩擦攪拌接合における攪拌部の大きさや金属組織の形成に及ぼすツールのショルダ部とプローブ部のそれぞれの役割を明らかにした。また、3次元可視化システムを用いて、摩擦攪拌接合中の攪拌部の形成や欠陥の形成メカニズムについて解明するとともに、FSW 中のモータトルクや欠陥形成に及ぼすレーザ予熱の影響について調査した。

当研究室で高精度に測定したFe-O 系の表面張力のデータをもとに開発したAA-TIG (Advanced A-TIG) 溶接法が、世界8か国で権利化されているが、さらに適用範囲の拡大に繋げる新提案を行っている。

4. 接合界面構造の解析

純銅、黄銅、純アルミニウムなどの種々のFCC 金属に対して、液体CO2とストップアクション法を組み合せたFSW 中の組織の凍結と、その後の熱処理を組み合わせることにより、FSW の攪拌中の組織形成と冷却中の焼きなまし効果を分離し、摩擦攪拌接合の組織形成メカニズムを解明した。また、ツール通過後の冷却過程における静的再結晶、粒成長の過程の存在を明らかにした。加えて、トレーサー法を用いて、ツールとの相対位置に対する、ひずみ及びひずみ速度の推定を行った。

HCP 構造を有するMg 合金に対して、試料の上下で異なる非対称両面摩擦攪拌接合を行い、集合組織の形成メカニズムを明らかにした。また、生体材料としての可能性のある、Co-Cr-Mo 合金に対して、HPT によって結晶粒の微細化を試みた。

5. 固液界面形成の制御

固体/液体間の物性として濡れ性が挙げられる。濡れ性の測定で最も一般的に用いられる静滴法において、通常の方法を用いると前進接触角となり、真の値より大きい値が得られやすい。この問題を解消するために、超音波振動子を用いた新しいシステムを構築することにより、同一系、同一環境下で前進接触角と後退接触角を同時に測定する手法を開発した。

測定精度を向上させた静滴法を用いて種々の溶融金属の物性値を測定し、種々の工業プロセスの解明に繋げた。例えば、溶融純Fe、SUS304、純Cu、純Al による各種硬質皮膜の濡れ性を測定し、被加工材の切削抵抗やFSW ツールを制御するモータにかかるトルクを併せて測定することで、各種切削工具のみならず、FSW ツールの性能と濡れ性の関係に強い相関があることを明確にした。今後のツール開発の指針を示すとして産業界から大いに注目されている。