ナノ粒子同士を直接接合 複雑なプロセス不要に
高断熱複合材も開発 

日刊工業新聞、2006年(平成18年)5月11日

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  大阪大学接合科学研究所の内藤牧男教授らは、ナノ(ナノは10億分の1)粒子の持つ高い活性を利用し、ドライプロセスでのナノ粒子同士の接合技術を開発している。複合粒子の作製とこれらを生かした部材開発までを手掛ける。開発装置に材料を入れて混合粉砕するという簡便さが特徴だ。これまでに、電極材料になるランタン・マンガン酸化物ナノ粒子や、ガラス繊維粒子とナノ複合粒子などを作製している。
  粒径がナノサイズになると、通常の固体粒子よりも表面の活性が高まる。粒子の融点はバルク材料に比べて低くなる。活性が高いためナノ粒子の扱いは難しくなるが、活性の高さを生かせば粒子同士の接合や粒子間の非加熱直接合成に利用することができる。
  内藤教授らの手法は、ドライプロセスで複合粒子を作製する時にボールミルを用いる手法に比べ、不純物の混入が防げる利点がある。
  非加熱のドライプロセスの実験では酸化ランタンと酸化マンガンを計量後、装置で粉砕混合。30分後には、ランタン・マンガン酸化物のナノ粒子が合成できていることをX線回折で確認した。
  一方、同じものを従来の手法で合成するには、液中での混合粉砕や乾燥・解砕、熱処理、さらに解砕と複雑で長時間のプロセスを要する。
  またガラス繊維粒子表面にシリカナノ粒子を多孔体状に接合した複合材料を作製した。ナノ粒子同士を接合して、数ナノ-数十ナノメートルの気孔を作製。さらに材料としての強度などを向上させるため、ガラス繊維表面に接合して繊維状複合粒子にした。
  この複合粒子を乾式プレスして、バインダー(結合剤)なしで空隙率約80%の板状バルク材料を作製している。ナノ空孔の効果により空気よりも熱伝導度が低く、熱が伝わりにくい特性がある。薄くても高い断熱効果が期待できるという。
  原料を粉砕混合する簡便な手法とはいえ、装置の開発や作製条件などノウハウがある。内藤教授は粉体のプロセス、粉体工学、材料化学の3分野の経験があり、「機械装置も粉体の挙動も考えることができ、かつ材料の機能発現までを考える必要がある」という。
  阪大接合研では産学連携の「粉体接合プロセス研究会」(代表=内藤牧男教授)を設置しており、06年度で第4期目。ナノ粒子のプロセス技術に関する大学側のシーズを産業界に提供してきた。今回はナノ粒子の分散技術の確立とナノ構造制御で、阪大、東京農工大、東北大、首都大学東京、横浜国立大の研究者が参加する。「産業界と意見交換するなかで、大学での新たな研究につながる情報も得られる」という。