JST News、Vol.5 No.9 2008年 12月号

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  水素と酸素を電気化学反応させる燃料電池は、副産物を水しか生まないため、エネルギー問題や環境問題の解決に貢献する発電方法として期待されています。
  その燃料電池のなかでも実用性が高いものとされている固体酸化物型燃料電池(SOFC)の、低コストでの製造につながる「低温合成プロセス」の開発に成功しました。独創的シーズ展開事業・委託開発の開発課題「界面構造制御による燃料電池低温作動セル」の成果で、大阪大学の野城清教授と内藤牧男教授の指導のもと、潟zソカワ粉体技術研究所に委託して企業化開発を進めていたものです。
  SOFCは、燃料電池の構成材料である空気極、電解質、燃料極がすべて固体材料であるのが特徴で、ほかの燃料電池に比べて発電効率が高く、貴金属触媒を必要としないことなどから、実用性が高いものと考えられています。しかし、広く実用化するためにはいくつかの課題があり、その一つとして、製造コストの低減が求められていました。
 高コストの理由の一つが、空気極に使われるLSM(ランタン・ストロンチウム・マンガン複合酸化物)などの製造に、通常1000℃以上の熱処理が必要なことです。今回の開発では、原料粒子を独自の特殊回転機械に入れ、低温条件で圧縮・攪拌し、粒子界面に機械的エネルギーを与え、新しい特性を有する複合粒子を製造することができました。試作では、LSMよりも活性の高いLSCF(ランタン・ストロンチウム・コバルト・鉄複合酸化物)を、900℃以下と従来よりはるかに低温で合成することに成功しました。
 開発されたLSCFを空気極として使用したSOFCの単セルが十分な出力特性を得られることも確認。この開発成功により、SOFCの実用化がさらに広がることが期待されます。

各種の燃料電池のなかで、発電効率が高く実用性が期待される
「固体酸化物燃料電池」の低温合成プロセスの開発に成功!