Award接合科学共同利用・共同研究賞

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拠点について

共同研究員の声

佐藤 裕

SATO, Yutaka

東北大学大学院工学研究科
材料システム工学専攻
教授

私は、主に摩擦攪拌接合や超音波接合などの固相接合技術や異種材料接合に関わる材料学について研究しています。接合研には多種多様な設備・装置があり、溶接・接合研究に関する人材も豊富ですので、これまでに何度か共同研究員として登録させていただき、共同研究を行わせていただきました。

最初は異種金属接合界面の透過電子顕微鏡サンプル作製について学ぶために来所しました。現在では集束イオンビームにより容易に作製可能ですが、当時はイオンミリングで時間をかけて加工するしかありませんでした。2週間近く滞在し、サンプル作製のノウハウを習得させていただきました。次は熱電対を用いた摩擦攪拌接合過程での熱履歴測定を行いました。接合時の最高到達温度と冷却速度を知りたかったため、接合過程で熱電対が切れてしまってはいけません。熱電対が切れずに摩擦攪拌部の温度を測定するため、試行錯誤した記憶があります。その後、摩擦攪拌接合の入熱測定や接合部の耐食性評価など、接合研の知識と技量、ノウハウを駆使した種々の実験を行わせていただき、これら成果の一部は国際雑誌へ共著論文として掲載するに至っています。

接合研は日本の溶接・接合研究の拠点であり、これからも溶接・接合界をリードいただきたいと思っています。一方、共同研究員制度を利用したときには、教員やスタッフに付きっきりでサポートいただき、日々の業務で多忙な中、申し訳なく感じたことが多々ありました。これからも共同研究員制度を健全に継続していただくには、教員の役割分担や増強などが必要ではないかと感じているところです。

松田 昇一

MATSUDA, Shoichi

琉球大学工学部工学科
エネルギー環境工学コース
准教授

私は、電磁石を用いた新しい高効率・高機能アーク溶接法の研究を行っています。溶接中に外部より磁場を付加した場合、アークや溶融池にフレミングの左手の法則に基づいて電磁力が発生します。その電磁力により、アークの向きや形状および溶融池の流れを任意に変化させることができます。例えば、通常上向姿勢等の難姿勢溶接では重力に起因するアンダーカット等の溶接欠陥が発生しやすくなりますが、溶融池内に発生させた反重力方向の電磁力を使用すると、ビードの垂れ下がりを防止し、溶接欠陥を抑制することができます。

私は、元々熱や流体の研究で博士号を取得していますが、前職の高専でアーク溶接に出会い、高温流体である溶融池流れに興味を持ち、また当時溶接の研究されていた先生の勧めもあり、溶接の研究を始めました。その後、溶接の研究をされていた先生が定年退職となり、沖縄には他に溶接の研究者がいないことから、元々溶接の専門家では無い私にとって溶接の研究の継続が難しくなりました。

その中、手を差し伸べてくれた先生が大阪大学接合科学研究所の田中 学 先生でした。これまでに何度も研究の壁にぶち当たりましたが、その度、田中先生より研究手法および解析・評価手法に関する理論的かつ実践的でオリジナルのアイデアに溢れるご助言をいただき研究の壁を乗り越えることが出来ました。気がつけば、接合科学研究所の共同研究員として10年以上になります。私が沖縄で溶接の研究を続けられるのは接合科学研究所の田中先生と共同研究員制度のおかげです。今後も是非、共同研究員制度を利用して、大好きな溶接の研究を続けたいです。

寺崎 秀紀

TERASAKI, Hidenori

熊本大学大学院
先端科学研究部
教授

我々は共同利用・共同研究拠点制度を活用し、溶接アーク現象の世界的権威である田中学教授が率いる接合科学研究所エネルギー制御学分野と共同研究を行いフラックスコアードアーク(FCAW)溶接中の溶滴移行現象のモデル化に関する研究を行なっている。FCAWでは特定の溶接条件下において、溶接中のワイヤ先端に柱状のフラックスが形成される。また溶滴はフラックス柱を伝って溶融池側へ移行する様子が観察されることがあり、このような溶滴移行形態を伴うFCAWでは、スパッタの発生量が少なくなることが経験的に知られている。したがってフラックス柱が形成される要因が明らかになることで、スパッタの発生量低減を実現するワイヤの設計指針を定めることができると期待されている。しかしながら、このフラックス柱の形成メカニズムは明らかになっておらず、ワイヤ内部で生じる現象を実験観察から明らかにすることは難しい。そこで本共同研究ではFCAWにおけるフラックス柱の形成メカニズムを明らかにすることを目的とし、非圧縮性SPH(Smoothed Particle Hydrodynamics)法を用いてFCAW中の溶滴移行の3次元シミュレーションに併せて、接合研所有の動画撮影可能なマルチチャンネル分光装置によるアークプラズマの温度分布や金属蒸気の濃度分布計測を行うことで、シールドガス、気化したフープ材とフラックスの蒸気からなる複雑なアークプラズマの熱源特性の解明に取り組んでいる。その結果、フラックス成分の比熱が大きく、熱伝導率が小さい場合においてのみ、フラックス柱が形成された。つまり、FCAW中のフラックス柱の形成には、フラックス内の熱伝導が重要な役割を果たしていることが明らかになりつつある現状である。

本制度により大学の枠を越えて接合研の有する研究設備や大量の資料・データ等を利用できる体制は貴重な機会であり、今後も本制度を通じて、溶接研究の基盤強化と新たな接合研究の展開に活用していきたいと考えている。研究を行う体制としては、旅費の支給等の措置があり、地方大学研究者にとっても活用しやすいものとなっている。溶接に関する共同研究拠点として、さらなる関連研究設備の充実が期待される。

瀬知 啓久

SECHI, Yoshihisa

鹿児島県工業技術センター
生産技術部
研究専門員

研究内容
局所的かつ短時間での加熱が可能であり、母材の材質劣化抑制に優れているレーザブレージング法を用いたセラミックスと金属の異種材料接合や、レーザブレージングの基礎となる、急速加熱時の金属ろう材の溶融挙動のその場観察などについて研究しています。
レーザブレージングでは、これまでに窒化物セラミックス/超硬合金、ダイヤモンド/超硬合金などの異材接合に取り組んできました。
これらに加えて、各種材料のレーザ接合性とその接合部特性を評価するため、青色半導体レーザを使用した異材接合や、レーザ溶接とレーザのモード制御の相関に関する研究にも着手しています。 これまで接合が難しいとされてきた材料へのレーザ接合技術の適用拡大に向け、夢を現実にすべく研究開発に勤しんでいるところです。

感想
接合科学研究所の先生方のご指導を仰ぎ、議論を深めながら一緒になって難題を解決し、研究を進めることが、非常に充実した成果へとつながっています。深く感謝致します。
また、研究所訪問の際には、先生方、事務の方々を含めた研究所の皆様が温かくお声がけ下さいます。そうしたこともあり、接合科学研究所がまるで自分のホームグラウンドのように感じております。さらには、来所している他機関の研究者の皆様との交流も生まれ、新たな連携が生まれる場にもなっています。
このような環境で研究できることは私にとっての誇りであり、貴重な財産となっています。今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

Anthony B Murphy

アンソニー・B・マーフィー

Chief Research Scientist
CSIRO Manufacturing
Sydney, NSW, Australia

I was fortunate to be funded as a JWRI International Joint Research Collaborator (JIJReC) to visit Joining and Welding Research Institute (JWRI), Osaka University for two weeks in November 2015. I was hosted by Prof. Manabu Tanaka and his colleagues Prof. Masaya Shigeta and Prof. Shinichi Tashiro, of the Energy Control of Processing Department.

During my stay at JWRI, I began to develop a model of the vaporization and mixing of different metallic elements (such as iron, chromium and manganese) in helium TIG welding of stainless steel. Professor Tanaka had previously shown experimentally that the iron, chromium and manganese vapours had different spatial distributions in the welding arc. This was an unexpected result that warranted detailed investigation.

The research that I started during the visit led to a detailed computational model that reproduced and explained Prof. Tanaka’s experimental results. This was a highly satisfying outcome that has significantly increased our understanding of welding arc physics. The research, and subsequent extensions of the work to argon TIG welding, have led to several joint publications in international journals, and have attracted substantial attention from the plasma and welding research communities.
In addition to this project, I was also able to discuss several new research directions during my stay at JWRI. These have led to significant results and additional joint publications.

I have collaborated with Prof. Tanaka and his colleagues for many years. My visit to JWRI as an International Joint Research Collaborator significantly deepened and extended this cooperation. I am sincerely grateful to JWRI for supporting my visit, and to Profs Tanaka, Shigeta and Tashiro and their colleagues for the hospitality during my stay and their continuing collaboration. The JIJReC Program of JWRI, Osaka University is, in my view, an important program that benefits both Osaka University and the international welding research and development.

Abhay Sharma

アブハイ・シャルマ

Professor
Department of Materials Science, KU Leuven, Belgium

Joining and Welding Research Institute (JWRI) is a world-renowned institute in the area of the material joining. It has always been a privilege to visit and conduct research at JWRI. My long association with JWRI was further strengthened to be a receiver of the JIJReC award for the research on “Laser-Arc Hybrid Welding of Lap Fillet Joints of HT780 Steel Sheet”.
In this research, Prof. Tetsuo Suga and Prof. Manabu Tanaka were my collaborators. The research was aimed to evaluate the capability of the laser-arc hybrid welding process to fill the plate gap in the fillet joints. The lap joints, obtained using the laser-arc hybrid welding equipment of JWRI, were studied for the interrelation between the welding process parameters and gap bridgeability and thereby assimilate the modes of failure. The weld samples were subject to uni-axial strength. The collective effect of the welding process parameters results in either straightening or weakening of the joint. Favorable parameters (e.g. moderate welding speed, higher current, and higher laser power) help to reinforce the joint. The investigation brings out new findings on the capabilities of laser-arc hybrid welding. The industries involved in thin sheet welding will be benefitted from the outcomes of the investigation. As a next step, the process parameters may be optimized to accommodate uncertainty in plate fit-up and thereby cut back the rejection rates on the incoming base material and outgoing welds as well.
The collaboration will further grow in time and would serve the best of the interests of KU Leuven and JWRI. A joint research project backed by leading funding agency for Japan and Europe (e.g. JSPS, ERC), will facilitate the amalgamation of Japanese and European expertise in the field of material joining. A student exchange program between the two leading organizations will catalyze the path-breaking research.