ご挨拶

大阪大学 接合科学研究所 所長
藤井 英俊
本研究所は、1972年に本学の独立した部局である「溶接工学研究所」として設立された後、「溶接」から「接合」への変革・転換を遂げながら、溶接工学・接合科学の基礎・応用研究を精力的に展開し、その結果、溶接・接合分野における我が国唯一、世界屈指の総合研究所として認知されるに至りました。科学技術の着実な進歩と発展、ものづくりの変革とグローバル化の大きな潮流の中で、1996年に「接合科学研究所」に改組・改称され、2009年に文部科学省から「接合科学共同利用・共同研究拠点」として認定されました。
本研究所では、「接合プロセス」、「接合機構」、「接合評価」の3研究部門が「接合科学」の圧倒的な強みとなってその基盤研究を行い、「多次元造形研究センター」が次世代AMセンターとして、AM(3Dプリンティング)の未来を探る役割を担っています。3研究部門とセンターが個々の専門性を発揮しつつ相互が有機的に連繋し、接合科学のイノベーション創出を通して、人類社会に貢献することを目指しています。他方、接合科学共同利用・共同研究拠点として、国内の国公私立大学などから毎年200名以上の共同研究員を受け入れるとともに、国際共同研究員制度により多くの外国人研究者を受け入れ、活発な国際共同研究を推進しています。人材育成の観点では、協力講座として、毎年、本学工学研究科から100名に及ぶ大学院生と学部生を受け入れ、世界トップレベルの研究活動を通じた高等教育を行っています。本年4月から、本学で「学術研究機構」が設立される中、共同利用・共同研究拠点としての役割が一層重みを増しています。
2021年度よりスタートした「国際・産学連携インヴァースイノベーション材料創出プロジェクト-DEJI-2MAプロジェクト-」事業は、多様な社会的要望や地球規模課題を「コア出島」で課題設計し、5大学6研究所の専門性の垣根を越えた「マルチ出島」を通じてイノベーション創出を加速します。5大学6研究所の力(シーズ)を結集し、企業等のニーズ応え、社会実装を迅速化するものです。
本研究所は、スピード感をもって時代の社会ニーズに対応できる良さがあります。時代の潮流に合わせながらも特色を活かした変革を遂げる姿勢で臨みたいと考えています。例えば、一昨年度、多次元造形研究センター1号館を、昨年度2号館を大幅に改修し、1250㎡をオープンラボ化することで、大型の国プロの実施や日本溶接協会とのコラボレーションを実現致しました。本研究所は、1990年に世界で初めて電子ビームによる金属AMに成功した研究所であるとともに、経済産業省の大型プロジェクトである経済安全保障重要育成プログラム(K-Pro)においては、代表機関として採択されており、当該分野においてこれまで以上に我が国並びに世界を先導して行きたいと考えています。加えて、新たに経済産業省大型プロジェクトに採択され、本年度から日本溶接協会と協力して、AM(3Dプリンティング)に関するデータベースの構築を行うことになりました。データベース、規格、認証を一体として行う、日本で唯一の世界認証(教育)機関としての役割を果たします。これらに関しては、我が国の国力を向上させるためにも、当該分野に従事される企業や中立機関との連携が不可欠です。ご協力の程、何卒よろしくお願い申し上げます。
以上のように、本研究所は、大阪大学憲章にも掲げられている「実学の伝統」を活かして、ものづくり産業界との活発な連携を行っています。民間企業との共同研究を活発に推進するとともに、現在、本研究所では3つの協働研究所と1つの共同研究部門を設置し、溶接・接合に関わる産学共創の拠点にもなっています。ダイヘン溶接・接合協働研究所、日本製鉄ものづくり未来協同研究所、Honda-大阪大学 接合科学ものづくり協働研究と異なる分野からそれぞれ分野を代表する企業に協働研究所を設置して頂いていることは、私共の誇りであります。このように本研究所は、その規模に比べて圧倒的な数の協働研究所、共同研究部門を設定して頂いておりますが、専任教授が室長として常駐するニューノーマルものづくりコンソーシアム室によって、これらの協働研究所、共同研究部門を有機的に連携させ、産産学の体制で研究開発を進める体制としています。
本年4月1日から、大阪大学先導的学際機構の中に全学組織として、月面都市開発研究センターを設置致しました。本センターは、接合科学研究所が有する光集光技術と酸素生成技術を核に立ち上げた組織です。接合科学研究所は、今後も、21世紀の人類社会のニーズに応え、22世紀に輝くグローバル社会を夢見て、接合科学の世界研究拠点として健全で豊かな人類の繁栄と発展に資するべく、所員一同努力していく所存であります。